冬の和のひととき、心を温める味覚
外の空気が澄み、手先がかじかむ季節。
そんな冬に恋しくなるのが、湯気の立つ日本茶と、ほっとする甘さの和菓子です。
忙しい日々の中で、茶を淹れる時間は心の休息。
お茶の香りが立ち上る瞬間、まるで時がゆるやかに流れ始めるような安らぎが訪れます。
寒い季節だからこそ、和菓子と日本茶がもたらす“ぬくもりの文化”を味わいたいものです。

冬の定番、善哉(ぜんざい)とお汁粉(おしるこ)
冬の和菓子といえば、まず思い浮かぶのが善哉(ぜんざい)やお汁粉(おしるこ)。
煮た小豆の香り、焼き餅がとろける食感、そして甘さに包まれる幸福感。
この温かい甘味は、身体だけでなく心まで満たしてくれます。
特に出雲や京都では、冬至や新年を迎える時期に“邪気払い”の意味を込めて食されてきました。
善哉(ぜんざい)に添える日本茶は、ほうじ茶や玄米茶がおすすめ。
香ばしさが甘味を引き締め、飽きのこない味わいを生み出します。

一方、お汁粉(おしるこ)は粒あん・こしあんなど地域によって異なる味わいがあり、
家庭ごとの“冬の味”として受け継がれています。
お茶をすすりながら、家族で囲む温かい食卓――それこそが、冬の日本らしい情景です。

最中やどら焼きの香ばしさ
外が冷える季節には、焼き菓子系の和菓子も人気です。
最中(もなか)のパリッとした皮に包まれた餡は、香ばしさと甘さの絶妙な調和。
一緒にいただくお茶は、香り高い煎茶や焙煎香のあるほうじ茶がぴったりです。
また、冬場は餡に柚子や黒糖を加えることで、風味豊かな深みを楽しむことができます。
同じく人気のどら焼きも、寒い季節にぴったりの和菓子。
ふんわりと焼かれた皮と、温かい緑茶の組み合わせは、まさに“癒しの黄金比”です。
抹茶と上生菓子の静寂な時間
冬の午後、しんと静まり返った部屋で、抹茶と上生菓子をいただく時間。
それは、寒さの中に心の温もりを見出すような豊かな瞬間です。
「雪の華」「椿」「寒牡丹」など、冬の上生菓子は見た目も美しく、
まるで一輪の花が器の上に咲くよう。
抹茶の凛とした苦味が、甘さを静かに包み、深い余韻を残します。
この静かな味覚の対話こそ、日本の“冬の美学”といえるでしょう。

茶道の世界では、冬は炉を切り、炭火を用いて茶を点てる季節。
湯気の立つ音、炭の香り、器の温かみ――五感すべてが「癒しの茶時間」を演出します。
ほうじ茶と焼き菓子の相性
ほうじ茶の香ばしさは、冬の空気にぴったり。
焼き芋まんじゅう、黒糖かりんとう、胡麻餅など、香ばしい菓子との相性が抜群です。
特に午後のひととき、ほうじ茶を淹れて小さな和菓子を添えるだけで、
冷えた指先も心も温かくなる――そんな魔法のような時間が生まれます。
湯気の立つほうじ茶から立ちのぼる香りは、まるで冬の陽だまりそのもの。
小さな湯呑の中に、ぬくもりと安らぎが凝縮されています。
冬の贈り物としての和菓子と日本茶
冬は、和菓子と日本茶が“贈り物”としても最も映える季節です。
寒い日に温かいお茶を添えて贈ることで、「どうぞお身体を大切に」という気持ちを伝えられます。
近年では、上質な茶葉と和菓子をセットにした冬限定ギフトも人気。
抹茶入りフィナンシェ、柚子羊羹、ほうじ茶クッキーなど、伝統と現代を融合させた商品も登場しています。
贈る人も受け取る人も笑顔になれる、“味覚のおもてなし”です。

冬の茶時間を豊かにする工夫
少しの工夫で、おうち時間がぐっと温かくなります。
お気に入りの茶器を使い、和紙の敷物を添える。
お茶請けに小さな和菓子を並べて、季節の花や香を飾る――それだけで、
日常がまるで小さな茶会のような特別な空間に変わります。
大切なのは、形式よりも「相手を思う心」「自分をいたわる心」。
和菓子とお茶は、冬の暮らしをやさしく包み込む文化そのものです。
まとめ:ぬくもりを分かち合う冬の味
和菓子と日本茶は、冬を越えるための“心のぬくもり”です。
甘さは優しさ、湯気は安らぎ。
善哉(ぜんざい)の甘い香り、茶碗から立つ蒸気――それらが冬の静けさをやさしく彩ります。
ひと口の和菓子、一杯の茶に込められた思いやりが、
寒い日々をそっと照らす灯のように、私たちの心を温めてくれるのです。








